嫉妬なんてそんな可愛いものじゃない。彼のそれは・・・ 













私の後、数メートルの位置で立ったまま、さっきからキュウゾウは黙り込んでいる。

彼が無口なのは今に始まったことじゃないけれど、私にはわかる。

いつもと明らかに違う空気、彼の怒りは部屋中に充満している。

このまま気付かぬふりをしたいけど、それは許されそうにない。



「ね、キュウゾウ。そんなとこに立ってないで座ったら?」


「・・・・」


ピクリと眉毛を動かすだけで、にこりともしない。可愛くない。

でも私もこれしきのことで挫けない。彼の無愛想なんてもう慣れっ子だ。


「あ、林檎食べない?凄く立派なのもらったのよ」


「・・・・・」



いつまで無視するつもりだろう。

私が少し顔をしかめると、キュウゾウの方も同じように眉間に皺を寄せる。

じっと私を見るその目は、わからぬのか、とでも言っているようだ。



「キュウゾウ? 怒ってるの?」

「・・・そうだ」

「何を?」

「・・・昼間」

「昼って・・・。何かあったっけ?」


彼の言いたい事はわかってはいたが、あえて知らん顔をする。

それがしゃくに障ったのか、キュウゾウは一言「ヒョーゴ」とだけ言い捨てた。


やっぱりね。 


昼時、私とヒョーゴが回廊で立ち話をしていた時のことだ。

背中に感じた視線はキュウゾウのそれだった。私とヒョーゴは普段から仲が良い。

だって彼は博識で色々な事を教えてくれるし、会話もキュウゾウよりはるかに弾むし面白い。

ある意味キュウゾウも面白くはあるけれど。

ただ、雑談していただけなのに、私にはそれすらも許されないと言うのか。

キュウゾウの独占欲の強さには、今までも驚かされてきたけれど

そんなに気に食わないのなら、その場で割り込めばいいものを

きっと私の様子を伺っていたに違いない。 この根性悪め。



んもう、我が儘なんだから・・・ と、溜息混じりに呟けば

キュウゾウの腕が伸びてきて、同時に頭と背中に痛みが走る。

私はその場にかなり乱暴に押し倒されたのだ。




「っ!いったぁ〜」

「・・・すまぬ」

「本当に悪いと思ってるのかしら」

「・・・・・すまぬ・・・」



キッと睨みつけてやったのに、その瞳は揺れもしない。

反省の色がない、と言おうとした矢先、彼はまたとんでもないことを口走る。



「その目だ・・・。そうやって、男を誘うのか?」


「はぁ? 誘ってませんけど」


・・・お前は隙が有りすぎる」



キュウゾウの顔がぐいと近寄る。咄嗟に私は片手で彼の胸を押した。

私が抵抗したのが予想外だったのか、彼はそのまま固まってしまった。

赤い瞳にじっとりと見つめられて、その整った顔にドキドキと鳴る自分の心臓が情けない。

こんなに強引で我が儘で子供な男なんて、知らない!と何度も思ったくせに。私は・・・






それにしても押し倒された格好。この状況で私に逃げ場はあるんだろうか。

彼の顔を下から見上げ、苦し紛れに彼に問う。


「どうしてそう我が儘なの、キュウゾウは」


上から見下ろす瞳は冷たいまま、するりと細い指が伸びてきて、私の唇の上で止まった。


「この唇が他の男に向けて動き、笑むのが許せないのだ」



言い方さえ変えれば 立派な殺し文句も、彼が言うとまるで脅しだ。

もう少し甘くは言ってもらえないものか。



「俺の・・ものだ」


「キュウゾウ・・・」




如何してこの人は こんなに堂々と人を縛り付けることができるのだろう。

だけどもそうして縛られることに 歓びを感じている自分がいるのも確かなわけで。

そのままゆっくりと彼の体重がかかり、目を閉じた瞬間にはもう、唇は奪われていた。 

やきもちを妬いた時の激しい口付け。 呼吸が出来なくて思わず声が漏れる。

私の様子に満足したように見下ろす瞳は、初めて嬉しそうに輝いた。


満足げに微笑む彼に、もう敵わないと。その力強い腕に身を任せた。



どうやら私はとんでもない人に愛されてしまったようだ。

勿論、後悔はしてないのだけれど。













独占欲

(そうだお前は俺のもの。 そして俺もお前のもの)