らぶ・ドライブ













今日も仕事で失敗した。会いたい人には会えない。

とぼとぼと歩く帰り道。大江戸の町は賑やかで、私の寂しさをより強くした。

一瞬 万事屋を思い出し ぶんぶんと頭を振る。

やだやだ、早く帰ろう。そう思いながら歩いていると

一台のスクーターが私の後ろで キキッと音を立てて止まったから驚いた。




じゃん。お前何やってんの?」


仕方無く振り向くと、バイクに乗った銀さんが 不機嫌そうにこっちを見てる。

久しぶりに見る銀さんの顔は、悔しいけどやっぱり格好良くて

私の胸は嬉しいって馬鹿みたいに素直に飛び跳ねた。



私はここ一週間 銀さんに会っていない。





「何って・・・家に帰るとこ」


「ふぅーん、真っ直ぐ帰宅ですか?寄り道もしねーで、いい子だなコノヤロー」


「・・・・」


「最近来ねぇから仕事が忙しいんだろうって思ってたけどー?」


「あ・・・うん」






私が何故万事屋へ寄らなくなったかなんて、そんなの簡単。

銀さんに恋しちゃったから

かといって、告白してふられでもしたら、どんな顔して銀さんに会えばいいのか

そんな事をぐるぐると考えると どうしようもなくせつなくなるから

ここ数日間、銀さん断ちをしていたんだ。




そんな私の気持ちを知るはずもない銀さんは


「んだよ、お前疲れてんの?」



なんて、急に優しい声を出したりして

私の馬鹿な心臓は、またキュンなんて音を立てる。





駄目だ、やっぱり銀さんが好きでたまらない。

銀さんの顔をまともに見ることもできずに、チラと見ては視線を泳がせて

そんな私に呆れたのか、銀さんはわざとらしくため息を一つ。

そして自分の後ろをつんつんと指差した。






「後ろ、乗れや」





「え? 何?ど、どこ行くの?」


「さぁな。とりあえず乗っときなさい」


「何それ。わけわかんないよ」


そんな文句を吐きながら、私はドキドキした胸のまま 銀さんの後ろに跨った。



















ブロンブロン 

銀さんのバイクはたまに頼りない音を出しながらも軽快に走る。


バイクの音、吹き付ける風

銀さんの匂い、銀さんの体温

全てが愛しくて胸が苦しくなる



馬鹿だなぁ、私。これが嫌で会わないようにしてたのに

冷たい風がびゅんびゅんと 私の頬を遠慮無しに殴るから

思わず涙がこぼれそうになった。

目の前には大好きな銀色の髪が、風に吹かれて揺れている。




「なぁ、おまえさー」




バイクの音に負けじと 銀さんの怒鳴る声がした。





「なにー?」


「万事屋好きかー?」


「うん」


「なら、明日は来いよな。新八が俺が何かしたんだろうって、うるせーし、神楽も寂しそうだぞ」



「う、うん」


「絶対だぞー」


「うんっ」




「って、一番寂しがってるのは 俺だったりして」


「え? 銀さん何?」



「寂しいって言ってんのーー!」


「え?」


「おまっ!わざとだろ?ホントは聞こえてんだろコノヤロー」



「聞こえないよ〜」


「イジメですかー!もう言わない、二度と言ってやんない」










思いも寄らない銀さんの台詞に、体の奥底から熱いものが込み上げる。

嬉しくて嬉しくて、さっきまで冷たかった頬までがぽかぽかしてきて

涙なんてどこへやら 私の顔は春みたいだ。


たまらなくなって、その大きな背中にしがみつくと、「あ〜あったけぇなー」

なんて言うから、私はまた嬉しくなって一層ぎゅうとしがみ付いた。


「ふわふわ肉まん二つ!たまんねぇー」

って、その一言は余計だけど








「とりあえず今から甘いもんでも食いに行こうぜ、勿論の奢りでなー」


「えーー私の?」


「銀さんに寂しい思いをさせた罰です」



寂しかったのは私もなんだけど、そう言われたら頷くしか無い。

私は思い切り大きな声で 「了解〜」と叫んだ。





銀さんのたった一言で こんなにも嬉しくなるなんて

安上がりな女バンザイ!だ。




私は両腕に精一杯の好きを込めて、 もう一度銀さんの腰に手を回した。