報告担当     紬屋 雨




















これは本当に内緒のことなんだけど。

本当に秘密の話なんだけど。




あたし ・・・知ってるの


喜助さんとの約束だから  さんには言えないんだけど

















あの日は雪が積っていて、とても寒い日だった。

それでも外はよく晴れていて 澄んだ空気が気持ちのいい、そんな昼下がり。


お客さんなんて、天候のせいってわけじゃないけど一人も来ないし

テッサイさんは買出し ジン太くんはお昼寝。 

いつもの開店休業のような店の中で、あたしはやる事もなくぼんやりしてた。



雪は小さな雑音を吸い込んでしまうのか 外はとっても静かで

店が暇なのをいい事に、キスケさんは朝から部屋に閉じこもっていて

別に珍しいことでもないから、あたしは特別気にもしなかった。







トイレに行った帰りふと窓を見ると

温まった窓ガラスには雫がいっぱい付いていて

下まで流れ出しているその雫を拭き取ろうと

雑巾を片手に、キスケさんの部屋の近くを通った時のことだった。









スリスリ スリスリリ〜〜 






と、畳を擦るような妙な音がしたの





忍び足で近寄ってみると、間違いなく部屋の中から聞こえるその音は

たまに止まったり、トントン なんて音に変わったり。

そして スリスリ〜 と一緒に微かに聞こえたのは 

キスケさんの鼻唄?だった。





キスケさんはよく 部屋に閉じこもることがある。

そういう時はだいたい大事なことをしている時で

あたしやジン太くんは なるべく近寄らないようにしているんだけど・・・


でも、その時に聞こえる音は だいたいがパラパラと紙を捲る音か 

金属を扱っているような硬い音で。

一緒に聞こえる音なんてのは ほとんどがため息のはず。


こんな音は聞いたことが無かったし、楽しそうに鼻唄なんて! 









あたしはものすごく気になった。 









何となく邪魔しちゃ悪い気がしたあたしは 

ほんの少しだけ開いた障子の隙間から そぉっと中を覗いてみたんだけど。

キスケさんは 部屋の中を動き回っているみたいで

たまに羽織がひらひらと舞って あたしの視界の邪魔をする。


それにこの位置からはどうしても 足元しか見えなかった。


キスケさんの裸足の足はゆっくりと 軽く交差したり前後に動いたり。


あたしは夢中になって 目を凝らして見ていると









キスケさんが    





ターンした・・・・






それはまるで踊っているみたいに見えたの


あたしの心臓はドキドキして 

見てはいけないものを見た時みたいに焦っちゃって もう大変。



えっとぉ・・どうしよう


ドキドキの胸はそのままに、あたしはそこから逃げようとしたんだけど。




「ウルル〜?」


その時キスケさんに呼ばれて あたしは心臓が飛び出すかと思った。

障子を開けて喜助さんが顔を出す。



「キスケさんっ、あの・・・・」


「女の子が覗き見なんてしちゃあ、行儀悪いっすよ?」


「ご、ごめんなさい」


怒られるかと思って思わず肩を竦めると

キスケさんはあたしの頭にぽんっと手を乗せて



「いいよ。で、何か良いものでも見えました?」


「いっ・・いいえ・・・・なにも」


「本当に?」


「ほ、 ほんとぅ、、、です」


みるみるうちに小さくなる声に、キスケさんはクスクスと笑い出して







「ウルルだけっすよ」


そう言うと あたしの耳元でこそっと囁いたの。




「えっ!」

あたしはただビックリして、目を丸くした。

その話は勿論知っていたから、余計に驚いたの。

キスケさんは 「やっぱり可笑しいよね。似合わないし」 そう言うと 

ちっともそうは思ってないような顔をして ふふんと笑った。







「ウルル、悪いけどお茶でも煎れてくれませんか? 喉渇いちゃって」


「あいっ!」



「あーそれとウルル?」





にはくれぐれも内緒ってことで」


「あいっ!」



あたしは元気よく返事をすると 台所へ走った。



さんには 内緒だから、これはあたしとキスケさんの秘密なんだ。

そう思ったら ちょっぴり嬉しくなった。


そしてその時のことを考えると なんだかとてもワクワクとした。

さんはきっと とても喜ぶから。



あたしはそんなさんの顔を早く見たいと思った。


鼻唄が出るなんて、たぶんキスケさんもあたしと同じ気持ちなのかな。
















キスケさんの機嫌が良いと あたしはとっても嬉しい。



キスケさんがさっき歌っていたあのメロディは

どこかで聴いた懐かしいメロディで


それはお茶を煎れている間中も あたしの頭の中を


ぐるぐると ぐるぐると 回ってた。
























つづく・・・

(もう何でもアリだね; この話は続いちゃいます)