本日の担当  















昨日の事なんですけどね。

私は喜助さんにイジワルをされました。



梅雨に入ったというのに、雨が少ない日が続いていますよね。

うちの小さな庭の草木たちは、この時間を待っています。


差し入れのビールを、お盆ごと縁側に置くと

私はそこに座って、庭で水撒きをする喜助さんを見ていました。



眩しい光に透ける柔らかな髪


羽織を脱いで腕まくりをして 


その手についた水滴が、太陽の光に反射してキラキラと光っていました。





振り返った姿に見惚れた、その時






私・・・発見しちゃったんです。



喜助さんの胸に・・・爪痕がある・・・ のを


それは明らかに引っ掛かれた痕・・・


胸のちょうど真ん中あたりです。


えぇ、それだけの事なんですけど


私は何故だかドキリとしてしまって


聞きたいけど聞きたくない 


妻のくせに何を躊躇ってしまたのか


取りあえずは気付かない振りをしていたんです。



だけどつい、視線は其処へ







、今日は如何したんスか?」


と、喜助さん


「え?な、何がですか?」


「さっきからずっと、アタシのこと見てません?」


「い、いつものことですよ」


私は慌てて、笑って誤魔化しました


喜助さんは何も言わず、ふふんと笑って


何食わぬ顔で、庭の水撒きを続けていました。

















視線を泳がせた塀の上に、お客さんの姿が見えました。


彼女は近所の野良猫で、家によくやって来るタマと言う猫の子です。

私と喜助さんがタマと命名したのです。

タマは私たちによく慣れていて、いつも縁側に上がり込んで来るのに

塀の上からこっちを見下ろすと「フーッッ」 っと一声

ぷいっと逃げて行きました。






「タマ、如何しちゃったのかしら?」

不思議に思って喜助さんに尋ねました。



「あぁ彼女はね、怖がりやさんなんスよ」


「怖がり?」


「水がね、駄目みたいッスよ」






聞けば喜助さんは、この間の私が留守の時、タマと遊んでいたらしいのです。

まぁ相手は猫ですから、たとえ女の子でもヤキモチはやきませんけどね。

その時喜助さんは、私が庭の木に水を撒いて欲しいと頼んでいたのを思い出し

水を撒いたと言っていました。








私は、ハッとしました。




「もしかしてその時、タマを抱いていたんですか?」


すると喜助さんは、くすくすと笑い出しました。



「いやね、離れないんスよ」



「やぁねぇ喜助さんったら、また面白がっていたんでしょ」



「あぁだって、必死にしがみ付くもんですからねぇ」



「もう、喜助さんてば・・・・」





きっと、タマがしがみ付くのが嬉しかったんだわ。

ほんとに子供みたいなんだから。

そう思うと私もつい、可笑しくなって くすくすと笑いました。




「イジワルねぇ、私にはとっても優しいのに」


すると喜助さんは悪戯っ子のような顔をして





「ん? にもイジワルしてるッスよ」




「?」





「例えばコレ・・」


そう言って胸の引っかき傷を、つんつんと指しました。









「ヤキモチ、やいたでショ?」












なんて可愛い人!


私は裸足のまま庭に飛び降りて

喜助さんの胸に、ギュッとしがみ付きました。



「おやおや、今日はですか」



喜助さんはそう言って、満足そうにふふんと笑っていたんです。







そんな可愛いイジワルをされた、というお話でした。




















つづく・・・





(おバカさんっ!)