愛しのカイロ












今日も寒いなぁ


曇った窓ガラスをキュッキュッと指で擦ると
外には一面の銀世界が広がっていた。


「うわ、、すごー」

確かに綺麗だよ、うん。
ロマンチックでもあるよね、こうやって眺めてるには

だけど極端に寒がりの私は、勿論部屋に閉じこもってるわけで。

温かい部屋の中で友達からのメールに返信しながら、雑誌なんかをパラパラとめくってた。



冬休みもあっという間に終わってしまった。
寒い中登校するのは辛いけど、早く友達にも会いたいし。

キヨとも毎日会えるんだしね。


私と彼は付き合ってもう1年になる。
告白された時も驚いたけど、まさかこんなに続くとは・・・

あの千石清純がだよ。











ケータイの振動する様子に、何となく予感がしてディスプレイを見る

やっぱり、キヨだ♪

・・・はいは〜い

・・・おーい、何してる?

・・・なんにも〜。しいて言えばダラダラ〜

・・・ははは、やっぱし。猫みたいにこたつで丸くなってんじゃないの?

・・・ん。ビンゴ!

・・・駄目駄目、早く出ておいで。俺、待ってるから

・・・え〜外?寒いじゃん

・・・俺といれば、熱くなるの間違いナシ

・・・なに言ってんだか

・・・とにかく前で待ってるから。早くね!

プツン・・・ツーツー・・・・・


うそ。電話切れちゃったよ


前って言ってたよね・・・・って事は家の前?

急いで窓に近寄って下を見ると、白い雪の中にオレンジ色の頭発見。

あ〜いる〜! 嘘でしょ。この寒いのに

とりあえず窓を開けて声をかけた。

「ねぇ、家に上がって待ってたら?」

「いや、ここでいい。早くね〜俺、凍死しちゃう」


チラッとこっちを見上げて、ひらひらと手を振ってる


もうっ! 何なのよキヨのヤツ



いくら私が寒がりだからって、あんな雪の中で立ってる人を
待たせるほど薄情じゃないわよ


バタバタと着替えて玄関へとダッシュする








「おぉ〜!はっやいね〜合格、合格」

にやにやしてるキヨの頭めがけて 一発チョップをかます

「急がせたくせに」

「いてっ、、こうでもしないといつまでも出てこないからね、は」

キヨの視線は、ささっと私の上から下まで通り過ぎた。

「それにしてもさ〜」

くすくす笑ってるキヨの言うセリフはわかってる


、雪だるまみたい」

ゆ・雪だるまか、、ちょっと予想を上回ったね


「ひど〜い!それがレディーに対して言う言葉?」

「彼氏とのデートなんだから、もうちょっとどうにか・・」

「いつデートになったんだか・・・」

「ま、はどうやったって可愛いから、いっか」


ほんとに嬉しそうに言うんだね

返す言葉に詰まるじゃん



そういう私も本日のキヨのスタイルをさりげなく見た。

雪が振ってるというのに、なんて薄着!

「ね、寒くないの?」

「ん? 大丈夫。日ごろの鍛え方が違うからね」

「意地張っちゃって」

そーいうところが、母性本能くすぐるってゆうか、
ほっとけないってこと、知っててやってるのかしら


私は自分のマフラーをはずして、キヨの首に巻きつけた。

そしてポケットの中に、強引にカイロを潜り込ませる。


「お、さんきゅー。って、あったかいねぇ」

「どんなに急いでても、カイロは忘れてないしね」

「んじゃなくって、が来たとたん 俺の周りがあったかくなった感じ」

「人間カイロか、、私は」

「そうかもね〜。俺にとってのは」
































もう随分と前の事だけど、俺はハッキリと覚えてる。

あれはそう、都大会の時

俺は絶対に勝つ予定で、いつもどおりを応援に誘ったっけ。

余裕のシングルス3だった。

相手は青学の2年生。それなのに、俺は負けちゃって
ギャラリーも多かったし、どうにもカッコつかなくって
応援の女の子たちに 一応笑って見せたんだ。


運が悪かった。アンラッキーだった。って


そんな時でも、俺は俺でありたかったからね


こういう時って、どんな言葉をかけたらいいか、
誰しもわかんないもんだから。

それまで緊張していた女の子たちも、
俺の笑顔で安心したように、笑顔になったっけ。

「ドンマイ!ドンマイ」

みんなのその言葉には、それなりに救われた。



なのに
応援スタンドの一番前の席で、タオルを握り締めて
一人突っ立っているは、笑顔にはなっていなかった。



ヤベ・・・・

勿論、すっ飛んでいって、には一番いい笑顔で言ったんだ。

「メンゴメンゴ!負けちゃったよ」

それなのにキミは、笑うどころか悲しそうな顔で



ねぇ、何でそんなにへらへらしてられるわけ?

悲しいなら悲しい顔しなよ

悔しいなら悔しい顔しなよ

かっこつけちゃってさ

だから私、キヨのことほっとけないんだよ

キヨの気持ち、私に全部移っちゃうんだから!

あんなに頑張ってきたのに

あんなに練習してきたのに

私は悔しいよ


そう言って 泣いたキミ







「いいのかな? は弱い男でも」

「いいよ。強くても弱くてもキヨはキヨだよ」





重たい荷物をやっと地面に置けた時のような

何だろう? この気持ちは

色んなこと誤魔化して上手くやってきた俺には
キミの真っ直ぐさが妙に ほっとした

フェンス越しだったから、抱きしめるわけにもいかず、
早くキミの元へ 飛んでいきたい気持ちは抑えて


「俺、マジでに惚れそう・・・・」

そう言うと


「彼女に対して失礼ね! 私はとっくにマジだよ」

やっと見せてくれたその笑顔は、天使のように眩しかった。




俺の弱いところ、即座に見つけて温かいもので包んで隠してしまう

千石清純が 千石清純でなくなってしまう

変な心地よさ

俺が無理に笑顔を作らなくても

が俺を笑顔に変えてくれる

ってほんと最高のヤツだよ


ちょっと気が強くって、真っ直ぐで
だけどほんとは、とっても心の優しい子。

俺だってね、わかってるんだよ。
俺に負けないぐらい、意地っ張りなキミのこと、、ある程度はね!


だから俺が素直になるぶん、ももっと俺に素顔を見せてよ




寒さでちょっぴり赤くなった頬で、文句を言いながらも嬉しそうな

「ねぇ、で、何処行くのぉ?」

さて、本日のデート内容でも告げますか


「今から神社でも行こっかな〜っと思って」

「神社? 二人で初詣で?」

「そうそう。俺、大事なお願いがあるからね」

「どんな〜?」

といつまでも、一緒にいられますようにってね」

「ふふ・・・私もキヨと同じお願い事しちゃお」

「いいね〜二人で願えば、神様も聞いてくれたりして」

「ぜ〜ったい聞いてくれるよ♪」



うん、そうだといいね

がいれば、俺はいつまでも頑張れる

俺が俺らしくあるために、キミというぬくもりが必要なんだ


「そーいえばカイロって、握ってると温かいんだよね。
もぎゅーってしちゃおっかな」

「ん〜でも時間がきたら、冷えちゃうんだよね。で、捨てられる」

「あ〜 例え悪かった。永久に冷たくならないカイロってのにしよう」

「はいはい、永久に冷たくならないように、キヨのポケットに入れておいてよね」












サクサクと聞こえる俺たちの足音が

まだ誰も踏み入れていない道に 二つの跡を付けていく。

俺の足跡の横には 小さなの足跡

こんな風にさ、二人の道を記して行くのもいいね








二つ並んでずっとずっとね


























END