本日の担当
うちの旦那さまは 隣で本を読んでいます。
何かしら分厚い書物で、あれは先日某所から取り寄せた物。
こうやって静かに愛しい人の横顔を眺めているのもいいものですが
せっかくなので今日の話を少しします。
二人でゆっくりと過ごす夜。
勿論この時間が一番好きなんですが ・ ・ ・
私はだいたい5時頃になるとそわそわとしてきます。
だって愛する旦那さまが帰ってくる時間ですもの。
だけど今日はやけに時間が経つのを遅く感じました。
洗濯物は畳んだし、買い物も掃除も全て終わっているし
なんとなくぶらぶらと部屋を見回しながら、ふと思いついたのです。
今日は、商店まで喜助さんを迎えに行こうかしら?
私が迎えに行ったら、きっと吃驚するんでしょうね。
そう思うと少しウキウキと心が躍りました。
食事の支度を終え、エプロンを外し、戸締りをして私は商店へと向かったのです。
少し乾いた風は、秋の匂いを運んでくれ
夕暮れ、人の往来、長い影、どこかで聞こえる子供の声。
あちらこちらから漂ってくる夕飯の匂い
夕時は温かい空気が流れています。
さほど遠くは無いこの道のりを、喜助さんは何を思いながら帰ってくるのかしら
今日あった出来事?
それとも夕飯のおかずかしら?
ちょっと冒険でもしているような、ワクワクとした気持ちに
足取りは軽く、気持ちも弾み出しました。
あっけなく着いた商店の近くの角で、私はなんとなく
その場所で喜助さんを待つことにしたのです。
えぇ、ちょっと驚かせたいなと思ったからです。
そのうち、ガラガラと戸の開く音がして、ちょっぴりの緊張感。
「店長ーぉ」
「これ、ジン太殿っ」
相変らずの明るい雰囲気が流れてきました。
「では、店長。また明日お願い致します」
「は〜い」
「なぁ、店長ってばー」
「ごめんね、続きはまた明日」
「勝ち逃げかよ〜。あともう一回勝負したら勝つのになー」
何かゲームでもして遊んでいたのかしら?
喜助さんたら、もう一度ぐらい相手してあげてもいいでしょうに。
あ、でもそうしたら、私はずっとここで待たなくちゃいけなかったわ。
「ジン太殿、店長はもうお帰りの時刻なんです」
「ちぇ〜」
不貞腐れたようなジン太くんの声に、思わず微笑んだ時
「がね、アタシを待ってるんですよ」
その声は優しくて
咄嗟に私はくるっと向きを変え、今来た道を戻り出しました。
早く帰らなくっちゃ!
喜助さんより早く 家へ着かなくっちゃ!
後のほうから微かに聞こえる下駄の音を気にしながら
私は走りました。
玄関に着き、窓を開け、急いでエプロンを着け、呼吸を整える。
間もなく下駄の音が近づいてきて、玄関で止まると
廊下を小走りに通り、玄関で待ち構え
そして、いつものように笑顔で
「 お帰りなさいっ 」
「 ただいま〜 」
喜助さんはいつものように、私を一度きゅっと抱きしめると
私の額にちゅと唇をつけて・・・
その時の喜助さんの満足そうな顔ったら。
それはとても小さな、変わらないこと。
あなたを待つ私と
あなたを待つ私を待っているあなた
今日ばかりは夕時が とても愛しく思えました。
つづく・・・
(残業はしない主義)