報告担当  黒崎一護















珍しく澄んだオレンジ色が やけに綺麗な夕暮れだった。 

下校途中の橋の上から ふと下を見下ろすと

川原の土手の草の上にポツンと、さんが座っていたんだ。







膝を抱えたその姿はどこか寂しげで 

いつもニコニコしているさんとは雰囲気がまるで違う。

俺はなんとなく気になって、その場所で暫くさんを眺めてたんだ。



いや別に深い意味はないぜ?


知り合いの女の人のそんな姿を見て ほっておけるほど

俺は薄情じゃないってことだ。






俺はとにかく一声かけて さんが元気に返事をしたのなら

そのまま帰ろうと思って、川原まで降りて行ったんだ。




さん?」


「あ、黒崎くん」


振り返ったさんは 何か思い詰めたような顔で

こんな顔見せられたんじゃ・・・




結局俺は、そのまま帰ることも出来なくなっちまってた。








「なにか、あったのか?」

俯いたままのさんに声をかけると


「私・・・喜助さんに嫌われたみたいなの・・・」

「はぁ?」


「全部・・・私が悪いの」

みるみるうちに涙目になるさん



「・・んなわけないだろ?」


「でも、でも、」


「何かあったのか?」


するとさんは バッグの中にすっと手を突っ込んで

一枚の紙切れを取り出した。



「これ・・・なんだけど」


「ん?」







さんが渡してくれた紙を手にとって見ると

それは空座町では花火大会の次に大きな行事、空座フェスティバル。

その中でも人気ナンバーワンの催し物 

ソシアルダンス大会の申込書だった。



「これが?」


「この間、参加したいって喜助さんに言ったの・・」

「あぁ」



「そうしたら、誰と踊るつもりなんすか?って聞かれて

ご近所の花屋の店長さんに誘われていることを話したんだけど

喜助さんは、絶対に駄目です!って・・・」





さんがダンス大会に出る予定だったことには驚いたけど

それ以来、その件に関しては全く無視しているらしいアイツ

ちょっとさんが気の毒にも感じた。



大人ぶりやがって、やってる事は子供じゃねぇか。




でもまぁ、アイツの気持ちもわかるけどな。


ダンスっつったら、手も握るし、腰も抱いちゃったりするわけだし? 


嫉妬深いアイツが許す訳が無い。






「やっぱり私の我儘ですね。喜助さんに謝らなくちゃ」


ぽつんと寂しそうに言うさん。


俺は何か言葉をかけてやろうとした。  





けどその時





ふっと面白い事を思いついちまったんだ。






さんの頼みなら アイツも二つ返事だろうし?


これは見ものかも知れねぇ。







「つーか、浦原さんを誘ってみたらどうかな」


「えっ!喜助さんを?」


「あぁだって、それはただのヤキモチだしな。

相手が自分ならいいんじゃねぇ?」


「でも・・・そんな急に・・・明後日なんですよ?」



「あの人器用だからさ、不可能なんて無いと思うぜ?」



「喜助さん、と・・・」





さっきまで俯いていたさんは、急にモジモジ。

そして俺は心の底からウキウキしたんだ。 

このナイスアイデアに、万歳でもしたい気分だった。






あのオヤジをかなり美化しているさんには悪いけど




どう考えても有り得ねぇ


下駄帽子のダンスなんてな



俺は笑いを堪えるのに必死だった。






そんな俺の隣で、さんは少し不安げに首を傾げて


「でも・・喜助さんにそんなこと・・」


「いや、大丈夫だって。 だから元気だせよ」


途端に嬉しそうにパァッと明るい表情になるさん。




なんかこの人ってほんとに・・・・





なんて思っていたら




さんはいきなり、俺の手を両手で包んでギュッと握り締めてきたんだ。



「ありがとう・・・優しいのね、黒崎くん」



上目遣いに俺を見つめるその瞳は 子犬みたいに澄んでいて




キラキラキラ キラキラキラ





少し潤んだ瞳の奥で何かが光る









・・・・・・・・・・・・







キュン!







え、キュンっ?







って俺かよ








「あの・・・さん・・・・・手」



「あっ、ごめんなさい」



いや、全然いいんだけど


全然いいんだけど、このドキドキは全然良くないだろ。




やけにスピードを上げている自分の心臓に焦った。


まさか顔なんて赤くなってねぇよな、と自分の頬を触ってみたり。




思わず逸らした視線をさんに戻すと


嬉しそうに微笑むさんの顔は 


夕焼けのオレンジ色に染まってた。








きっとたぶん、俺も



















帰り道、俺はいつもと反対の手で鞄を持った。

さんに握られた手はなんとなく ポケットに突っ込んで

そして俺は、珍しく口笛なんて吹いてみたっけ。











死刑執行は もうじきだ。



あの時の気分はそう、 久しぶりに勝利感を味わったような気分だった。






















つづく・・・


(一護リベンジのつもり(笑)