報告担当    花刈ジン太
















昨日の夕方の話だ。


そろそろ買い物に行く時間だってのに

テッサイはゆっくりと茶なんて淹れてるし

店長ときたらそわそわと、店を出たり入ったりしてたんだ。



何かあるのか? そう聞こうとしていたら 



「こんにちは、ジン太くん」って

後から間の抜けたような、高めの声がした


あぁ、それで・・・

さっと振り向いたけど、さっきまでウロウロしてたはずの店長は、店の中に入っちまってて

今まで待ってたくせにタイミング悪いな。

そう思って中に入ったら、何事も無かったかのようにいつもの場所で待ち構えてた。





さんは手に大きなスーパーの袋を下げていて


「今日はね、頑張っちゃうから。期待していてね」

そう俺に言うと

店長の方を見て、にっこりと笑った。

店長もやっぱり何も言わずに、にっこりとさんに笑ってた。






「夕飯、ここで食べるのか?」 と店長に聞くと

「えぇ、たまには皆で食べるのも、楽しいでしょ?」

なんて、だらしなく笑って言った(いや、だらしなく見えたってだけ)


俺は別にそんなことどうでもいいんだけど

どうやらテッサイも知っていた様子だし

俺とウルル、そう子供には話してなかったんだって事にちょっとムカついた。



まったく大人ってヤツは時々勝手なことをする
















まだ夕飯までには時間があった。

さんは店の中をウロウロとしてる。


ただ一人増えただけなのに、いつもと雰囲気まで違う気がした。

テッサイはいつもより優しいし、いつのまにかウルルまで

さんになついているように見えた。



だけど


明らかにおかしいのは店長だ。


さっきからずっと、さんばっか目で追ってやがる。




何でそんなに見てんだ? 

いつも一緒にいるくせに




「なぁ、店長」

「んー」

さんばっか、見てるんだな」

「えへへ、だって、って面白いんスよ」


「面白い?」 

目じりの下がりきった顔で、さんを追ってる店長の方が

よっぽど面白いと思うんだけどな。



「見逃したら、損した気分になっちゃうんです」



何わけわかんない事言ってんだ?





「あ・・・つまづいた!何も無いのにー」


くっくと笑う店長が俺はちょっと心配になった。




「あ・・・笑ったぁ」

今度は満足気に 微笑んでやがる。



何だよ、結局メロメロなだけじゃん!


これが新婚ってヤツか?
ちょっとウザイな・・・・



そう思っていたら、店長がさんを呼んだんだ。



「はぁい」とすぐにすっ飛んで来たさんは

猫みたいにぴったりと店長にくっついて

店長の手はいつのまにかさんの腰に回っていた。



おいおい、子供の前でラブシーンかよ。


ちょいと気を利かせて、視線を外してやったんだけど


二人は何もしないで、ただ見詰め合って笑っただけだった。




何で呼んだんだ?


意味わかんねぇ



俺はそんじょそこらの子供とは生きてきた年月が違うんだ。


体は子供でも中身は大人なんだ。


だけど、この大人たちのする事は全くわかんねぇ。














さんと店長が帰った後で、テッサイに聞いてみたら




「店長と殿は、とても愛し合ってらっしゃるんですよ」


なんて、目頭を押さえながら目を潤ませてた。



愛し合ってる? それはわかるさ


だからあんなに強引に結婚なんてしちゃったんだろう、けど


愛し合うとあんなに莫迦になれるもんかな。







大人ってのは奥が深いぜ













あ、そうそうさんの料理はとても美味かった。


店長が最近太ったと言ってたのは


あれもただの惚気だったんだな。






















つづく・・・



(愛について悩めるジン太)