報告担当 黒崎一護
アイツに関わると、ろくなことが無い。
この前は会うことなく逃げられたけど
あの日の俺は、見事に捕まってしまったんだ。
「黒崎サ〜〜ン」
遠くから自分を呼ぶ声に、ため息が出そうになった。
夕時ということで、商店街は人通りも多かったし
それをいい事に俺は、わざと聞こえない振りをしたんだ。
「なに、無視してるんっスかぁ」
間近に聞こえた声の主に視線をやると
そこには案の定、機嫌の良さそうな下駄帽子がいて
俺は反射的に身構えた。
「なんか用か?」
バシバシと嫌な予感がした。
「い〜え、別に」
そしてアイツは、わざとらしくパチンと扇子を閉じると
「そういえば、この間はお遣いありがとさんでした」
お遣い? げっ、アレか・・・・
一瞬、一体アレは? と聞きそうになり
俺は慌ててその台詞を呑み込んだんだ。
「いや、別にいいって。じゃ、俺急ぐから」
下手な質問はこいつを喜ばせるだけだ。
そう思い、俺はそのまま真っ直ぐに歩き出したんだ。
すると
「いやぁ、黒崎サンのおかげで、がたいそう喜びましてね」
さんが・・・?
ふと、足が止まる。
「そういう訳でアタシも、たいそう楽しめましたから」
気付けば真横に来ていたアイツは、人の顔を覗き込むなり
「あれぇ?黒崎サン。顔、赤くないッスか?」
なんて嬉しそうに言いやがる。
そして
「まさか、うちの奥さんで・・・・
如何わしい妄想なんて、してはいないでしょうねぇ」
「ばっ!バカ野郎・・んなわけ」
「ならいいんスけど・・・」
ヤバイ
この展開はマジでヤバイ、そう思うと変な汗が出てきたんだ。
するとアイツは
「チラッとでも考えてごらんなさい」 と
扇子で口元を隠しながら、低い声で一言。
「殺しますよ」
そしてニヤリと笑いやがった。
「喜助さぁ〜ん」
「は〜い」
さんに呼ばれて声色まで変わるアイツ。
とりあえず助かった俺は
嬉しそうに手を振りながらアイツを呼ぶさんに
心の中で感謝したんだ。
「黒崎くんと何のお話ですか?」
「いえね、彼はどうやらアタシ達が羨ましいらしくって」
「あら、やだぁ〜 うふふ」
もう勝手にやってくれ。
そして頼むから、俺を巻き込まないでくれ。
さんは知っているんだろうか。
アイツが本当は、嘘吐きで二重人格なんだってことを。
そしてとんでもなく恐ろしい奴なんだってことを。
「じゃ、黒崎サン また今度」
「ごきげんよう」
「あ、あぁ」
二人去って行く姿を、ただ呆然と見つめた。
ちっ、いい年した大人が、手なんか繋ぎやがって。
見てるこっちが恥ずかしいっつーの。
俺は占いってヤツが嫌いだ。
勿論今でも信じちゃいねえ。
だけどその日の朝、ふと目に付いたテレビの占い。
そう、あの日は
たしか蟹座は最下位だった。
つづく・・・
(一護の災難はまだまだ続く?)