「ねぇ〜 一角ぅ〜」



庭で鬼灯丸の手入れをしていたら、後ろからの声がした。

「ぁん?」

面倒くせぇから振り向きもせず空返事、俺は手を休めない。


今日は天気がいい。


俺の砥ぎ方がまたいいもんだから、鬼灯丸は太陽の光を見事に反射して

キラリキラリと輝きやがる。



「いいねぇ〜」


チャッチャと刃を左右に回し、その輝き具合に惚れ惚れしていると


「一角っっ!!」


声と同時にペチンと頭に軽い痛みが走った。

コイツ・・・手と声 同時に出しやがって、全く気の短けぇ女だぜ。

どんな鬼のような顔してるんだと 俺も軽く睨みながら振り向くと 

は意外にもニコニコしてたから驚いた。



「んだよ?」


「ねぇ、今夜は何が食べたぁい?」


「は?」









何なんだ、珍しく昼間っから甘えた声なんか出しやがって

「たぁい?」だと? のヤツ一体どうしちまった。


しかし頭のいい俺はすぐに思いつく。昨日の熱い夜のことだ、そうに違いねぇ。



そーいや昨夜は、我ながらいい仕事をした。

のヤツもノリノリで、いい声で鳴いてくれたよな、うん。

ハッキリとわかっただけでも 2回はイった 間違いねぇ。

ご褒美? それとも今夜の催促か? まぁどっちでもいい。

そこまでわかれば詮索なんてヤボってもんよ。





「はぁーん、なるほどな」


「ん?わかっちゃった?」


「おぅよ」


ニヤニヤしてると目が合い 俺もつられてニヤニヤしてしまう。


「飯なんて 何でもいいぜ」


「それじゃ困るのよ。せっかくなんだし・・・」


「んじゃ、鰻とかよぉ、なんか精のつくもんでもー」


そう言いながら 近くにあるの腰をべろんと撫でる。


「アハハ、アンタらしいわね」


軽く笑いながらぺちっと手を叩かれたが、そんなこと気にしねぇ。



何だかんだ言って、コイツも好きだよなぁ 連チャンかよ。

そう思うと、昨夜の事を思い出して、俺の息子はたちまち勢いがつく。

否、しかし今はよしておこう、今夜だ今夜。









「じゃ、買い物行って来る」


「おぅ!気ィつけろよ」

庭から声をかけると、は一度振り向いて

「今夜が楽しみだね」 と言った。

そうもハッキリ言われると 流石の俺も照れるって。


別に初夜ってわけでもねぇのに、あんな風に期待さちゃあ気合だって入るもんだ。

ちくしょう! 可愛いじゃねーか




















時が経つのはあっという間、夕時になり家の中は美味そうな匂いに包まれた。

機嫌のいい、美味い飯、そして夜のお楽しみ。

こそばゆいような気持ちが押さえきれず、台所で支度をするにちょっかい出してると

玄関の方で何やら賑やかな音がした。


「あ、来た来た」


「ん?」


ドタドタガタガタ そして人の足音が聞こえたかと思うと良く知った声、声。


「こんばんはー。お邪魔しまぁす」

「邪魔するぞ、一角」



見るとこれまた機嫌の良さそうな 弓親と射場さんが酒瓶を持って立っている。

射場さんに関しては両手に、だが ・・・


「オイオイ、お前ら何なんだよ」


酒は嬉しいが、今夜はちょっとヤボ用があったりするわけよ。

まったくコイツらは どこまで気が利かねぇんだ。


もしかして、の機嫌を損ねちまってねぇかと 

いつのまにか隣にいるにチラリと視線を流したら 

「いらっしゃい」と言った顔は確かに笑顔。


 ・・・?


おい。呑気だな、お前

コイツらが2・3時間で帰るなんて有り得ねぇぞ。

4・5時間、つか朝までってパターンだぜ。ソイツは困るだろーが。


と、相変らず騒がしい玄関に視線を戻すと なんと黒い人だかりが出来ている。


「ご招待頂きありがとうございます!」

「お邪魔させて頂きます!」


次々に入ってくる十一番隊のやつら。

手にはそれぞれ酒瓶やら土産もん? どうなってんだ。

驚いている俺をよそに、皆それぞれに座敷に上がり込んでやがる。


弓親に問い正そうと「おいぃ!!弓親ぁ!」と声を荒げるが

アイツ、視線だけをチラリとよこしやがって


「後で隊長も来ると思うよ。あの人もあれで人情厚いしね」


って、何言ってんだ?おめぇ


「おい一角!この阿呆たれが。はよこっち来て真ん中に座らんかい!」


とか言ってもう飲みだしてる射場さん。



うようよと座敷に群がる男達 その光景はハッキリ言って鬱陶しい。

胸くそ悪いが、まさかこの人数を追い返すわけにもいかねぇし。


何とかにコイツ等の馬鹿さを詫びようと 台所へ舞い戻った。




忙しそうに働くが いつになく健気でしおらしく見える。



・・・・なんつーかその・・悪ぃな」



後ろからなるべくやんわりと声をかけると

振り向いた顔は 案外機嫌が良さそうで、ほっとしたのも束の間


「あっ!一角。ちょうど良かったわ」





そしてエプロンで手を拭きながら 俺に言った台詞はこうだ。



「ごめ〜ん。ジュース買って来て。副隊長の飲み物忘れてた」



「・・・・。」










渋々とから渡された金を懐に入れ、草履を履く。


「あれ〜一角どこ行くの〜」


「うるせぇ! 買い物だ」

「早う帰りんしゃい、今日は夜通し酒盛りじゃけぇ」

「いってらっしゃい、三席!」

「お帰りお待ちしております!」

「頼んだわよ、一角」


「いいよね〜、一角って結局皆に好かれてるよねぇ」





そんな声を背に受けながら、俺は無言で店まで走る。

早く帰って飲まねぇと、ほんとに酒が無くなってもおかしくないからだ。

けど、どうも納得がいかねぇ。宴会なんていつだって出来るじゃねぇの。

何で今日、しかも俺ん家じゃなきゃいけねぇんだよ。

それに・・昼間のあのとの会話は何だったんだ?

つーか今日は一体何の日だ?













今日は貴方の誕生日

(あっ・・・そういや副隊長、炭酸飲めたっけ?)



















一角、お誕生日おめでとう!
ギャグですみません; 彼のお祝いはきっとワイワイだろって事で・・^^;