オレンジの秘密の続編になります。
「内緒話」→「オレンジの秘密」→「トキメキはいつも」の後が良いかと思います。







本日の担当     















今日の喜助さんは、帰ってくるなりご機嫌斜めでした。

いつもどおり玄関の扉が開かれると同時に


「お帰りなさぁい」

と、笑顔で出迎えたにも関わらず


「ただいま・・」

返ってきた声はいつもより低め。


そしていつものように、額にキスを待っていた私の隣を

喜助さんは私に触れもせず、通り過ぎてしまったのです。




















喜助さん?

どうしたのかしら?




とても寂しかったんですが、何かまた凄い事を考えているんだわ。

そう思った私はなるべく、いつもどおり接することにしたんです。



だって、うちの旦那さまは天才なんですもん。



きっとまた手品のように凄い物を発明するのかも知れない。


そんな旦那さまが仕事に集中できるように


余計な詮索や口出しはせず、見守ってあげるのが妻の務め・・・







けど、喜助さんは仕事部屋には行かず 居間へ。

私はなんとなく着いて行くのを我慢して 台所へ。



すると、喜助さんはこちらを気にしているのか

背中にチクチクと、視線を感じるんです。



何か声をかけないと悪いような気がして、私は台所から声を掛けました。






「ねぇ、喜助さん。今日はすごく新鮮な魚を頂いたのよ?」



返事はありません。




「・・・せっかくだから、お刺身にしてみたんだけど」



聞こえていないはずは無いのに・・・




少し胸がズキンとしたけれど、暗くなってはいけない気がして

私は覚悟を決めて、喜助さんに出すお茶を持って居間へ行きました。



勿論笑顔は絶やさずに



・・・すると







は随分と楽しそうッスねぇ」と



明らかに意地悪な声で言うのです。


これは私に何か問題があるんだ・・・と、ドキドキしていると







「今日も会えたんすか? ・・・彼に」




私は一体何の事だかわからずに



「彼って? 何のこと?」 そう聞くと



喜助さんは私からわざとに視線を外し





「若い男の肌はやっぱり、アタシと違いますか?」



なんて言うんです。





若い男の? 肌! 





何か誤解されているんでしょうが、私には何も思い出せません。



「何の話?喜助さん・・私は身に覚えがないけど」



喜助さんは チラチラと私に視線を流し



「そうっすかぁ? 人目もはばからずに手を握り合っていたと

噂に聞いたんすけどねぇ」



「そ、そんなこと無い!」





「ふぅ〜ん、じゃあ黒崎サンが、に似た美女といい仲になってると

いう事なんすかねぇ」






黒崎くん? 私は一生懸命 記憶を辿りそして


ドキリ・・・

そういえばあの時、と、ふとダンス大会の前のことを思い出し

自分の軽率な行動に 今更だけど後悔しました。











「あの、喜助さん。お願いだから聞いて」










私はあの時の黒崎くんとの会話、一部始終を喜助さんに話しました。

黒崎くんの素敵な提案、心配する私にかけてくれた言葉。

喜助さんは黙って聞いていましたが、思い出したように



「そういえば彼は、ダンスホールの最前列に、陣取っていましたよねぇ。

アタシはてっきり、他に知り合いでも出ているのかと思ってましたが・・・」



「ううん、そうじゃないの。私たちを見に来てくれたのよ。

早くから来て場所取りまでして・・・そんなに楽しみにしてくれたなんて」









「へぇ〜〜楽しみ、ねぇ」




「黒崎くん、優しいとこあるでしょ?あ、喜助さんには敵わないけど」



誤解が解けたのか 喜助さんの口調はいつもどおりに戻っていました。



そして



・・」と私の腕を引き

体ごとすっぽりと その胸に押し付けて



「ただいまのキス、してなかったッスね」と




いつもより強く私を抱しめ、額にチュと触れた唇は

そのまま軽く まぶた、頬、唇へと移動し


長い口付けが終わった後には




「でも、はアタシだけのものッスよ?」


念を押すように私の目をじっと見つめ


「例え手だろうと、他の男に触らせちゃあいけないんです」



「・・は・い・・」


















喜助さんの意地悪は、ヤキモチが原因だったなんて。


だけど結局は、いつも以上に可愛がってもらえて


私はとても幸せを感じました。





そんな喜助さんも


満足気に私の頭を撫でながら



「黒崎サンに 恩返しをしなくちゃあ、イケナイっすね」と







それはそれは楽しそうに 微笑んでいたのでした。






















つづく・・・


(仕返しの仕返しの・・・)