― おい
― 。 おい、起きろ
どうやら私は相当に酔っ払っているらしい。
だって、耳元で聞こえるのは確かに・・・
いやいや、あの人がこの場に居る筈が無い。
そして私の肩を揺すっている筈も無いんだけど。
私を抱えている手の大きさやら、腕の筋肉の付き方やら
それは間違いなくあの人のもので
私はハッキリしない意識のまま、うっすらと目を開けた。
「あ〜 一角み〜っけ!」
「一角み〜っけ! じゃねぇだろが」
「何やってんだ、おめぇは」
何って・・・・
辺りを見回すと、先程までの記憶は鮮明に蘇り
そして私は、ハァと大きく溜息を吐いた。
大体メンバーが悪すぎた。乱菊に、京楽隊長に、私。
最初はもっと仲間もいたが、次々と逃げるように退散してしまって
当然のように残ったのは、いつもの3人組。
先に潰れた人は「恋人との馴れ初め話」を暴露するという
乱菊の提案した罰ゲームに(京楽隊長が一番ノリノリだった)
私は絶対に、負けるわけにはいかなかったのだ。
テーブルの横には、私と同じく潰れたお二人さんが転がっている。
「ほら、帰るぞ」
「って一角・・・ 何やってんの?」
「何って、この格好見てわかんねぇのか」
一角は座敷の縁に腰掛けて、こっちに背中を向けている。
いや、その格好についての質問なんですけど
これは、もしかしなくても・・
「早くしろっ! カッコわりぃだろが」
私だって少し恥ずかしい、けど酔っている事を言い訳に
素直に一角の背中に、抱きつくように体を乗せた。
「重っ!お前もしかして太っ 」
ぺチペチン!!!
「痛てぇっ」
「黙って歩く」
「この酔っ払いが」
一角が飲み屋の扉をガラリと開けると
ひんやりとした夜風が、 撫でる様に私の体に触れ
澄んだ空気は 体の奥まで染みこんでゆく。
それがとても心地良く、 私はふと上を見上げた。
ぼんやりと夜空を灯す月明り。
いつもとは違う目線。
こうやって誰かの背中に乗るなんて、子供の時以来だな。
何だか恥ずかしくて
だけど少し懐かしい
静かな道に二人。 だけど 足音は一つだけ。
私達の影は重なって、歪な形のまま 動いている。
「ねぇ」
「ん?」
「今日って 十一番隊も宴会じゃなかったっけ?」
「あぁ」
「じゃぁ、なんで?」
「檜佐木が教えに来たんだよ」
「そっかぁ」
そういえば檜佐木君も 最初は一緒に飲んでいた気がする。
「・・・ったく、お前の酒癖は最悪だからな」
「最悪?失礼な」
「お前、潰れたら、どこでも寝るだろうが」
「・・・・・」
「気がついたら他の男と一緒でした、じゃ困るんだよ」
ほら、あん時も・・・と言って、一角の肩が大きく揺れた。
あの時・・・・
一角と私が、付き合う事になったあの夜の事だ。
そもそも私が、馴れ初め話を話すのが嫌だった理由。
それは、私達が体の関係から始まったってこと。
お互い意識も無いほどに酔っ払っていた あの夜
流れというか、その時の勢いで私達は結ばれた。
朝になって慌てた一角が、 責任取るって言い出したんだっけ。
「俺が居ない時に 飲みすぎんなって言っただろーが」
「うん、でも〜 罰ゲームでね、負けた人は馴れ初め話をするって・・・」
「・・・・・あ? それがどうした」
「だって・・私達ってさ」
「言えば良いじゃねぇか。 あの人のセックス、凄いんですって」
「なっ」
「それでコロッと堕ちちゃったんです、ってよー」
「・・・ 首、絞めていい?」
くっくと笑う一角の声を聞いていたら
本当にそう言っても良かったなと、思えてきて
なんだか私まで可笑しくなって 少し笑った。
ねぇ、一角
アンタは気がついて無いだろうけど
あの時、私はちゃんと意識があったのよ?
みんなが帰って行くのも知ってたけど
私は意識の無い振りをして
そのままアンタの部屋に残ったのは
いっそこのまま・・・・って 少しの期待。
あの最中、私の肌が熱いって言ってたけど
それは、お酒のせいだけじゃない。
「アンタだって、気がついたら他の女連れ込んでました、じゃ困るよ」
すると一角は一瞬黙って、またくっくと笑い出す。
「そりゃねぇな」
「絶対にとは言い切れないでしょ」
「絶対ねぇ」
「うそ」
「俺は意識が無くなった事なんて、今まで一度もねえよ」
え?
「それにもう、手に入れちまったからよ」
と、言うと照れたのか、つるつるの頭を掻いてみせた。
もしかして一角、アンタも?
胸がじんわりと熱くなる。
なんて素敵な月夜だろう!
ぎゅうと背中にしがみ付いて 一言「好き」と呟いたのに
アンタは何も言わないから
首筋にわざとチュッと音を立てて キスをした。
きっと赤くなっているだろう、その顔色は
月灯りの下じゃぁ、見えなかったけど。
月夜と酔っ払い
いつもお世話になっている美微さんへ
おんぶーー(*^^*ゞ