こうして目を開けると あなたの顔が隣にある

それだけで 幸せ
















寒い道を一人、マフラーを鼻先まで引き上げて、私は早足で部屋に向かった。

容赦なく私の頬を叩く風、腕を組んであるく恋人たち。街はとても意地悪だ。

今までのことを振り返ると、その早い展開に、あれは全部夢だったんじゃないかと思う。


突然私の前に現れて、いつのまにか恋をして

一人暮らしの私の部屋に当然のように居座ってた彼。

呼びもしないのに来て、バイトから帰るといつも居て

「お帰りィ」って、いつも笑顔で抱しめてくれた。


金髪で口が悪くて変な奴だけど・・・時々凄くカッコイイ人。








真子がいなくなってもう、2週間が経とうとしている。







アパートの下から部屋を見上げても、私の部屋は暗いまま

ドアを開けるとつい、ただいま、と声が出てしまう。

だけど部屋は暗くて寒くて、私の声が響くだけだった。



何処に行ったんだろう、何処にいるんだろう。

思えば私は真子のこと、何も知らない。




「ちょっと行ってくるわ」

真子はそう言った。ちょっと・・・って

だから私は「うん」とだけ答えて、何処へとかいつ帰るかなんて聞いたりはしなかった。

まさかこんな事になるなんて、思っても無かった私は

ぽつんと置いてけぼりをくらった猫みたいに、いつも真子を探してた。



公園でガサッと音がすれば、真子だと思って振り向くし

頭の上で何か音でもすれば、真子だと思って空を仰いだ。

でも、草むらから出てきたのは 野良猫で

私の上を飛んでいたのは真っ黒なカラス

その度に私は 真子を好きな気持ちを思い知らされた。



真子の顔、真子の声、真子の体

思い出したら胸が痛くなる

寂しくて愛しくて仕方ないよ






つけっ放しのテレビでは、つまんない番組の司会者が、早口で何か喋っている。

こんな日に限って友達からの電話すらない。


あぁ、この部屋ってこんなに広かったっけ?

この部屋ってこんなに寒かったっけ?

真子がいないこの空気には いつまで経っても慣れやしない。



シンジ・・・






だんだんと、遠のく意識

このままここで寝てしまおうか

そっと目を閉じると 遠いところでガチャリと小さな音がした。

うちかな?隣かな? こんな時間に・・・

そうは思うけど、もう玄関に走る気もしない。

炬燵に顔を突っ伏したまま、目は閉じたまま

脳ミソが宙に浮くような 変な感覚に身を委ねていると






目の前の扉がガラッと開いて・・・

私の心臓は飛び出すくらいに跳ね上がった。

脳ミソはいきなりフル回転。


だって、目の前に真子が立っていたから








「たーだいまぁ」


真子!



気持ちはもう、真子の胸に飛び込んでいるのに体が動かない。

目を丸くして口は半開きだったと思う。

真子は憎らしい顔でニィと笑うと さっさと私の隣に潜り込む。

人は本当に驚くと声すら出ないものなんだ。心臓だけが暴れてる。





「感動のご対面〜なんてな」

   一体どこ行ってたの?



「なんや、目ぇまん丸にしてからに」

   当たり前じゃん!ばか



「オレがおらんと寂しかったやろ」


   ばか!何で笑ってるの? ばか!






真子に会ったら言いたいこと、文句だっていっぱいあった筈なのに

私はこぼれそうになる涙を飲み込むのに必死で 一言呟くのがやっとだった。



「恐かった・・・・」


真子がこのままいなくなっちゃうのかと思ったんだよ。



「すまん。今度は連れてくわ」


もっと早く終る筈やったんやけどな、オレも耐えられへんやったわ

そんなことを言いながら、真子は私をぎゅうぎゅうと抱しめる。




「真子・・・体、冷たいよ」

「外、雪降ってたしなー」

「ほんと?」

「明日は積るやろな。 雪だるまでも・・ふゎ、っくしゅん!」

いきなりくしゃみをした真子に思わず声を出して笑ってしまった。



「体、温めないと。お風呂でも入る?」

「んーー、まずはに暖めてもらうわ」


そう言ってぐいぐいと 私の体を引き寄せる。

冷えた真子の体が、やけに現実味を帯びていて 

これが夢じゃないこと教えてくれる。


真子のばか。 寒くて冷たくて あったかいよ


いつもの調子に顔が緩む。 部屋の空気もあの頃に戻ったよう。



嬉しくて確認するように何度も真子の顔を見た。

そうして心の中で叫ぶ、大好きだよ、大好きだよ、真子。









このまま二人で寄り添っていようよ

朝も昼も夜もずっとずっと








ねぇ、明日雪だるまなんて作れるのかなぁ


私たちが踏み出せば 雪なんて一瞬で溶けちゃうかもよ?














おかえりなさい・・・・・
























平子祭様へ献上       from 美美 お題『隣にいる