今日は何だか冷えるなぁ。そう思ってカーテンを少し開けてみると
外は雪が降っていた。夜の闇にキラキラと光るそれはとても綺麗。
もうすぐ春なのに、名残り雪かしら
その様子を暫く眺めてから カーテンと窓を開け放した。
当然流れ込む空気は冷たくて、部屋の中でも吐く息は白い。
私は急いでヒータの温度を上げ、ベッドから持ってきた毛布を膝に掛ける。
そしてそのまま 視線をまた窓の外に戻した。
何となく 今夜、彼が来るような気がしたから
あの人が何者なのか わからない。
あの人がどこから来るのか わからない。
だけど彼はいつのまにか、私の特別になっていた。
私だけが知っている 私だけの秘密の彼。
こん、と音がして窓の方を見ると 白い服を着た彼の姿が見えた。
来た。 私の女の勘も捨てたもんじゃない。
「いらっしゃい、ウルキオラ。 久しぶりだね」
座ったまま声をかける。待ってたのよ、と心の中で呟いて
彼は何も言わずに部屋に入ると 当たり前のように私の隣に座る。
特に会話をするわけでもなく、私は二人ぶんの紅茶をいれる。
そっけない関係だけど、これでも最近は寄り添うことも増えてきた。
寄り添うとはいっても、色気のある方に進むわけではない。
ただ、お互いの体温を感じるほどに 傍にいるだけ。
それは初めて彼がここに現れた時からそうだった。
窓から入ってきた不審者に、最初は勿論驚いたが、不思議と恐怖感は無く。
それよりも私はこの不思議な人に 居て欲しいとさえ思ったんだ。
そして今は この人をもっと知りたい と思ってる。
「窓、閉めた方がいいかな?」
「・・否。この方がよく見える」
「雪。 好きなの?」
「何故そんな事を聞く」
「だって、前に来た時も雪、降ってたから」
「あぁ。よく覚えてるんだな」
彼は視線を窓にやり、空をじっと見ていた。 そして私は彼の横顔をじっと見る。
白い肌、大きな瞳、薄い唇 ・・・ 綺麗な人だな
そして少し開いた彼の唇からは 私と同じように 白い色が漏れた。
「寒くない?」
「いや・・・は寒いのか?」
「まぁ、ちょっとね」
肩をすくめて見せると 彼は私の膝にかけておいた毛布を取り
そっと包むように 私の頭の上に覆い被せた。
勿論、隣にいる彼の頭も私と同じように スッポリと毛布に隠れる。
そんな様子に二人して微笑んで 風が入り込まないように、胸の前まで毛布を引っ張ると
それは、暖かい二人だけの空間になった。
相変らずチラチラと空を舞う雪たち。
吐く息は相変らず白いけど、体はふんわりと暖かい。
部屋の中の静けさに 街の騒音も遠くに響く。
この二人だけの空間がとても気に入った私は
何だか嬉しくて 彼の肩にもたれかかった。
見上げた彼の瞳は 優しく私を見下ろす。
そんな彼が なんだかとても愛おしくなって
私は思わず自分から彼の唇に そっと自分のそれを押し当てた。
ウルキオラは驚きもせず、 自分の唇を触ると
「あったかいんだな、人間は」
そんな当たり前の事を言った。
長い時間そうしてたのか 本当はとても短い時間なのか
いつのまにか私は眠っていて、気がつくと彼は消えていた。
それが夢じゃないと証明してくれるのは
部屋に残る彼の匂いと、空になった2つのマグカップ。
いつもこうなんだ。
彼は突然現れて いつの間にかいなくなる。
だけど今 私の心は暖かいものに包まれている。
私は自分の唇に残る あの柔らかな感触を思い出すように
自分の唇をそっと撫でた。
ねぇ、ウルキオラ
・・なんだ
ずっとこうしてたいな
そうだな
俺も、同じことを考えていた
彼の台詞を頭の中で思い出すと、顔が自然に緩んでいく。
もう一度熱い紅茶を飲もうと立ち上がり、ふと、窓を見ると
今度はちゃん窓が閉められていた。
そして白く曇ったガラスに 浮かんだ文字を見て
私はまた胸が熱くなった。
キミに会いにくるよ