予感















「と言うことなので、サン、明日はよろしく」

チンと電話を切ると、満面の笑みを浮かべて喜助さんが振り向いた。







お母さんったら・・・・年頃の娘が男の人と温泉に行くのよ?

それでも親か! なんて心の中で突っ込んでみても仕方ない。

雨ちゃんやジン太くんをだしに、あんなにも上手く持ち出せば

どんな人だって、ころっと騙されちゃうんだから

喜助さんは本当に 人を丸め込む天才じゃないかと思う。








そもそも事の発端は

商店街での”秋の大感謝セール”の福引で特賞を当てたこと


 温泉旅館一泊二日家族4名様ご招待


家へ帰って両親に聞いてみたけど、仕事が休めないから無理よなんてアッサリ言われて。

う・・ん、でも せっかく当てたのに勿体無いなぁと

パッとひらめいて浦原商店に持って来たのだけれど

昨日から遠くに仕入れに出掛けているとかで、テッサイさんが留守だった。


そしてこの状況

















布団の中で今日の昼間のことを思い出す。


サン、明日はよろしく」


語尾にハートが付いていたような?

あの妙に嬉しそうな笑顔が、頭から離れないでいた。





喜助さんと温泉・・・・・



喜助さんと温泉・・・・・



いやいや別に二人きりってわけじゃない。雨ちゃんもジン太くんもいるんだっけ

期待と不安が入り混じったような気持ちに、私は強引に蓋をして目を閉じた。











*******














そこは小さいけれども、とても感じのいい温泉旅館で

無駄なものは無く小奇麗に片付けられた部屋が、私はとっても気に入った。


いつも深夜まで仕事の両親を待たずに一人で取る食事とは違い

4人でわいわいと食べる夕食は、うちのそれと違って温かい

豪華な食事も、より楽しくて美味しく感じた。





食事を終えると いざ温泉へ


皆それぞれにウキウキとしながら、タオルと丁寧にアイロンのかかった浴衣を抱え

私と雨ちゃんは仲良く女湯へ、喜助さんはジン太くんに引っ張られながら男湯へ。



久しぶりの温泉に、心も体も癒されて大満足した私たちは

部屋に戻ると布団の上で、枕投げなんてしながらひと暴れ。

まるで修学旅行のような盛り上がりが、楽しくて楽しくて


そして、いつもより遅く寝床に着いたけど




興奮しているのか、私はなかなか寝付けないでいた。


楽しい旅行のせいなのか それとも同じ部屋に喜助さんが寝ているせいなのか

わからないけれど・・・















あ〜もう眠れない



せっかくだからと思い、音を立てないようにそうっと立ち上がると

私はさっきお風呂に入った時に見つけた 家族風呂に行くことにした。



夜中のせいか3つほどある家族風呂はどこも空っぽで

そこは大浴場とは違って、随分と小さめなお風呂だったけど

一人で入るには余裕があるほどの大きさだった。


嬉しいことにそこは露天風呂で、頭上には星空、涼しく吹く風がとてもいい感じ。




湯船にゆっくりと身を沈めて ふぅとため息をつく。


辺りは静かで 水の音がやけに響く。



やっぱりみんなと楽しく入るのもいいけど

お風呂は一人でゆったりと入るのが好きだなぁ。



そんな事をぼんやりと考えていると、 隣でカタッと音がして






「湯加減いかがッスか〜」


「うそっっ!喜助さんっ」




しずしずと戸が開いたから吃驚した。




「声かけてくれないなんて 寂しいなぁ」



「何で入ってくるんですかー」



「だって、サン一人じゃ寂しいでしょう?」




いえ全然寂しくないです、むしろ迷惑です


・・・・心の声は届かない。








お風呂に入るんだから当たり前かも知れないが

喜助さんの体らしい肌色が視界に入ってきて

もうどうしようもなく焦った私は 体ごと反対側を向いた。



喜助さんは別にいつもと変わりなく

ぽつぽつと話をふってくるけれど、私に返事をする余裕なんてかけらも無い。


鼻歌なんて歌っちゃって 喜助さんはご機嫌だ。


あぁ、逃げ出してしまいたい・・・だけど













そのうち

ちゃぷん・・・


水面が大きく揺れて


湯船の中のお湯の量も少し増えて






ドキドキなんてもんじゃない!



男の人とお風呂に入るなんて、生まれてこのかたお父さんしか知らないし

お父さんとだってもう、数年も前から別々に入ってるんだし


色々なことが一瞬にして頭の中を巡ってく。






私の目に余る動揺なんてお構い無しに 喜助さんは




「はぁ〜 極楽っスねぇ」なんて


呑気な声を上げていて





「あの・・・こっち見ないで下さい」




勇気を出してやっと言った台詞にも



「あぁ ゴメンナサイ」



ごめんなんて思っても無いくせに。 


その証拠に喜助さんの視線は 相変らず熱く突き刺さっている。



まだお風呂に入って数分しかたっていないというのに


既にのぼせたように顔中が熱い。







ねっとりとした沈黙が流れた。






とその時、喜助さんの足の指と私の足の指が ちょこんと触れ


ドキンとした瞬間に 器用に指を絡めてきたもんだから


私はなんだかくすぐったくて思わず、うふっと笑いが漏れた。




サン、か〜わいい」



喜助さんは調子にのったのか、ずいとこちらに近寄ってきた。


「!!!!!!」


そして私の太腿にそっと手を伸ばして



「それに・・・・凄く綺麗な肌してますねぇ」





声にならない悲鳴が込み上げてきた。



ドキドキは最高潮



壊れてしまいそうな勢いで動く心臓



逃げ場が無いとはこのことだ。



だって喜助さんより早く上がったりしたら


それこそオールヌードを見られてしまう。


それも嫌だ。



そして胸のふくらみに喜助さんの手が触れると

ビクンと体が震え



「いいッスねぇ〜その反応」






なんて








ああもう










捕まった






恥ずかしさよりも この熱いトキメキに溺れてしまいそう。










お父さん、お母さんごめんなさい













あたしは今夜・・・・ きっと ?



















3万打感謝リクエストで書かせていただきました。