本日の担当
最近ぐんと寒くなってきましたね。
先日のことですが、さすがにもう半袖は着ないだろう
そう思って 衣替えをした時の話です。
衣替えとは言っても自分の分だけです。
だって喜助さんは年中同じ格好なんですもん。
いつ見ても喜助さんのタンスの引き出しは
同じ作務衣が何枚も入っているだけ。
いえ、別に不満は無いんですよ。
だってとても似合っているでしょ?
いい男は何を着ても男前なんです。
だけど寒くなると・・・・さすがに心配でもあります。
いつも足袋ぐらい履けばいいのにって、そう思うんですが
喜助さんは神経質なくせに 変なところ不精というか
用意しても身に着けようとはしないので、なんとなく私も諦めていたんです。
綺麗に畳まれているそれに、やる事はないなと、タンスを閉めようとした時。
引き出しの下の方にチラッと白いものが見え
私はゴソゴソとそれを引っ張り出しました。
わぁ、懐かしい・・・
それは私が以前 喜助さんに、と思って買って来た白いセーターでした。
結局一回着て見せてくれただけで、お払い箱になった品物です。
一応捨てずに 引き出しの中に入れていたんですね。
そういえばあのセーターを着た時、喜助さんたら
「〜 チクチクするっす」
なんて泣きそうな声を出し
「もう、素肌に着るからでしょ? 下着つけて下さいな」
そう言って下着を渡すと 「なんか面倒っすね〜」なんて
しぶしぶ着てはくれたのですが
「、それで、下はこれでいいんスか?」
あ・・・・・
うっかりズボンを買い忘れていた私は
白いセーターと作務衣のズボンを履いた喜助さんの姿に
思わず ふふっと吹き出してしまい。
喜助さんは勿論へそを曲げて・・・・
それ以来 全く着てくれなくなったんです。
えぇ、次の日ズボンを買ってきたのに、ですよ。
意外と強情なんですよ。 ここだけの話・・・
そんな事を思い出し、でもふと 悪戯心が芽生えちゃいました。
洋服しか無かったら・・・・それを着るしかないでしょう?
次の朝は何だか少し怖いような、ワクワクするような気持ちでした。
平然と食卓に朝御飯を運ぶことが、どんなに大変だったことか
だって、喜助さんのタンスには ジーンズと白いシャツしか入っていないんですもん。
喜助さんは案の定 困ったような甘え声で私に言いました。
「あの〜 アタシの着物が一枚も無いんですけど」
「あ、ごめんなさい。クリーニングに出しちゃいました」
「え?全部?」
「はい、全部」
そんなこと有り得ないのに、喜助さんは詰め寄ろうともしません。
大人しく奥へ戻っていきました
心臓はドキドキです
そして私の前に現れたのは 白いシャツにジーンズを着た姿の喜助さん。
何だかいつもより若く見えて、あまりの素敵さに胸は高鳴り
自分の作戦にまんまと自分が嵌り、もの凄く照れちゃいました。
喜助さんはあまり機嫌が良くない様子でしたが、朝御飯を食べ終えると
「じゃあ、行って来ま〜す」
そう言って、いつもどおり下駄を履くと、帽子を被って出て行こうとします。
「ちょっ! 喜助さんっ。その帽子と下駄は・・・あの〜」
「だって・・・ 仕方が無いでしょう? 」
泣きそうな顔
しょんぼりとした声
私は思わず そのまま出て行こうとする喜助さんの袖を引っ張って
「ごめんなさい。あります着物・・・・」
バタバタと奥へ行って いつもの作務衣と羽織を出してきました。
喜助さんは ニッコリと笑ってそれを受け取ると
「ねぇ、。アタシはがどんな格好をしていても
は綺麗だと思ってますよ?」
と私の髪を優しく撫で
「世界で一番可愛い奥さんだって、思ってますよ?」
なんて もの凄〜く優しい声で囁くんです。
私は喜助さんの袖をきゅうと握って、喜助さんの胸に顔を埋めました。
「ごめんなさぁい・・・喜助さんは世界一カッコイイ旦那さんです」
ほんの悪戯な気持ちだったのに
ちょっとした洒落のつもりだったのに
私は、とんでもなく悪い事をしたような気分にさせられ
泣いて喜助さんに謝ったのでした。
ほんの小さな悪戯心で こんなにも罪の意識に染められるなんて。
私は二度と、喜助さんに洋服を着せようなんて思わないと思います。
攻める事無く、怒る事無く、結局は喜助さんの意のままに
私はやはり、喜助さんにはかなわないんです。
そう思った出来事でした。
つづく・・・
(でも見たいよねぇ)