期限切れのバレンタイン
彼女からの別れの言葉に
「・・・がそれでいいなら」
そう応えて、俺は部屋を飛び出した。
あの時、何でそんな事言ったのか
それは俺がただ、ガキだったからで
嘘と本物の違いにも気がつかず
ただ不器用な俺達は、お互いの体でしか
つながりを感じることが出来なかった。
傷ついていたのは、何も俺だけじゃなかったのに
俺達が出会ったのは、ほんの数ヶ月前
そして会えば必ず、体を重ねた。
何でこんなに嵌ったのか
その訳は簡単。エッチがいい
初めて年上の彼女をゲットした俺は
当然、との関係に溺れた。
でも、俺はもう、それだけじゃなかった。
だけど未だにそれが目的だと思われている?
そうは思ってはいたものの
俺にはどうすることも出来ないでいた。
そもそも恋人になるとしたら、最悪の出会いだった。
あの日は雨が降っていて
いつもはカッコイイ俺が、情けないほどぐちゃぐちゃで
それもそのはず
賭けていた試合に負けたからね
俺は俺なりに全力を出した試合だったのに
負けた。
詰めが甘いんだ、そう思い知らされた。
今までの自分を、全て否定されたような気持ちだった。
頭の中は真っ白で、何となく街をうろついて
半分ヤケで、目に留まった綺麗なお姐さんに
駄目もとで、ナンパ
だって、こういう時は年上に限るよ
余裕のある態度、落ち着いた笑顔
エッチだって勿体ぶらない
そして何を喋ったのかも覚えていないくらい
俺は確かに変だった。
彼女の顔すらも、ろくに見ることができなかった俺。
ナンパしといて、気の利いたセリフも出てこない
なのに足は勝手にホテルへと向かっていた。
彼女は何も聞き出そうともせず
俺も何も言わなかった
その体、その声にボロボロな俺の心が少し癒されたのは
言うまでも無い。
あの時、俺が泣いたのも、彼女が知らない人だからで
これからの俺の人生に、関わる人になるなんて
思ってもいなかったからで
一応礼儀だと思って最後に交わした 携帯番号
だけど俺はその日以来、から離れられないでいた。
自分のベッドに横になったまま、天井を見つめると
浮かんでくるのは、の顔
想うのはただ、キミのことばかりなのに
気持ちだけが空回りしているようで
もどかしい想いを断ち切るように、
天井に向かって拳を突き上げた。
このままじゃ駄目だ・・・
俺はまた一つため息をついた。
投げ出していた携帯を拾って
そして、リダイアルボタンを押した。
・・・俺。清純
・・・ん。どうしたの?こんな時間に
・・・なんとなく。ね、? 明日は何の日か知ってるよね?
・・・え?明日? あぁ、バレンタインね。
・・・良かった。忘れてなかったんだね
・・・そりゃ、TVでも職場でも一応話題になってるし
・・・で、は、くれるのかな?
・・・何?わざわざ確認なんて
・・・だって、。こういうの忘れるタイプじゃない?
・・・・清純はたくさん貰えるんでしょ?
・・・俺はから貰いたいんだけど
俺の賭け、わかってくれないかな?
・・・私、チョコは本命しかあげないの
・・・俺にはナシ?
・・・う〜ん、あたしをあげる。じゃ駄目?
そう来ましたか
・・・あたしって・・・そりゃそれも嬉しいけど
また、交わされた
・・・んじゃ、決定。明日8時に家に来て
いつもこんな調子
俺の言葉はいつも適当にスルーされて
の本心は見えない。
俺はどうにか逆転を試みるんだけど
彼女は俺よりも、一枚も二枚も上手らしい
バレンタイン当日
俺はわざと紙袋にいっぱいのチョコレート持参で
の部屋へ行った。
は何食わぬ顔で 紙袋を覗き
「すごっ!清純ってやっぱりモテルんだ」
焦りもせず、ヤキモチも妬かず
「これ、おいしそ・・食べていい?」
なんて聞いてくる。
「いいよ。その代わり、後で俺にも食べさせて」
はにっこりと微笑んだ。
お決まりの行為の始まり
合図なんて簡単だ。
その日のベッドの中で俺は、いつもより激しくを求めた。
抱いても抱いても 満たされないのは心
の気持ちは何処にあるのか
苛々する
「清純・・・・今日は凄いね」
「・・・・・・」
「なんか、犯されてるみたい」
「・・・犯してるんだよ」
「・・・・・・」
は笑うのかと思った。
さっきまでの喘ぎ声は、いつのまにか消えて
は小さく首を振りながら、その細い腰をそっと引いた。
「どうした?。」
「何かあったんでしょ。もう、やめよう」
「何もないよ。やめない」
「だって・・・・あの時みたいな顔してる」
「あの時って・・・?」
「・・・清純に初めて会った時」
あぁ、あの時
忘れたくても忘れられない、最低の夜
でも、そんな最低の夜に、俺はに出会ったんだ。
「私達もう、終わりにしよう?」
突然のからの別れの言葉に
俺は気が動転していた。
今日はバレンタインだろ?
やっぱり俺達が結ばれることなんて
有り得ないわけ?
その後の記憶では確か
が泣いたのを覚えてる。
どうして泣いたのか、俺は自分のショックの大きさに
そんなこと聞く余裕もなく
さっさと服を着て、部屋から出て行った。
俺の涙はもう、二度とには見られたくなかったから
そしてそれっきり
俺はの部屋に行くことは、無くなった。
あれから、1年が過ぎた。
あの時、キミが泣いた理由
こんなにも月日が流れた今、やっとわかった気がするんだ。
本気だったんだよね
俺達
傷つくのが怖かっただけ
ねぇ、今度俺が電話しても、キミは笑って応えてくれるかな?
今度こそ本当に、心からキミを抱きたいんだ。
離れ離れになって1年間
二人の距離を縮めるのは
簡単ではないだろう
だけど
俺達が愛し合ったことは
間違ってなかったってこと 証明したい。
何ヶ月かかっても、何年かかっても、
俺が証明してみせる。
お願いだから このキミへのこの辛い気持ちに
終止符を打たせて欲しい。
携帯を取り出して、ディスプレイの文字を見る
何度も開けては、眺めるだけの名前。
このボタンを押しさせすれば、に繋がる
今まであんなに躊躇していた気持ちは
何故かチラリとも顔を見せず
俺の手はへと繋がるボタンを押していた。
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